こんにちは。90年です。
今回紹介する本は『ついやってしまう体験の作りかた』
有名ゲームを題材にして、そこに詰まったデザインを解説しながら人の心を動かす体験の作り方をまとめた本です。
こんな人におススメ・ゲーム制作を学びたい人
・ものづくりに関わっている人
この本には、いくつかの有名ゲームタイトルが出てきます。
その中に自分のプレイしたことのあるゲームがあった場合、その解説を読むとなるほどそうだったのか!となる感覚がとても気持ちいいんです。
ゲーム好きの方特にワクワクしてしまいますよ。
では本書の流れに沿って内容を紹介していきます。
目次
体験デザインとは

人はなぜ、つい
「やってしまうのか」
「夢中になってしまうのか」
「誰かに言いたくなってしまうのか」
この「つい」こそが体験デザインの持つ力です。
「つい」やってしまう心の動きを作ることを本書では「体験デザイン」と呼び、詳しい解説とビジネスや暮らしへの応用方法をまとめています。
そして、このついやってしまうが散りばめられた有名ゲームたち。
誰もが聞いたことのあるゲームに含まれた、人を夢中にさせる要素に着目して体験デザインのつくりかたが解説されています。
体験デザインを構成する大切な要素を大きく以下の3つにわけて解説しています。
直感デザインスーパーマリオはなぜ帽子を被っているのか 驚きのデザイン
ドラクエにはなぜぱふぱふが登場するのか 物語のデザイン
ラストオブアス、風ノ旅ビトの共通点
既にワクワクするラインナップ。
ひとつずつ紹介していきます。
直感デザイン

まずは、「直感のデザイン」
直感のデザインとは、
シンプルで簡単なデザインで「直感」させるデザイン。
これは具体的に、どうゆうことかというのは「スーパーマリオ」を題材にして解説されています。
スーパーマリオはなぜ帽子を被っているのか

プレイしたことがある人は想像できると思いますが、初期画面でマリオは右を向いています。
そこにフォーカスしたことがあるでしょうか。
それは、初めてプレイする人が直感的に右に行けばいいのかな?と感じるようにデザインされているからです。
そしてなぜマリオは帽子をかぶっているのか。
それは帽子のツバの向きによって右に向いているということをより際立たせるためなんですね。
ほ〜と思いますよね。
最初はなんの説明もありません。ただマリオが右を向いて画面左端に立っている。
とてつもなくシンプルで簡単なこのデザイン。
ぱっと見の面白そうというデザインは全て削って「右に行くのでは?」と直感させることに特化したデザインになっているんです。
このシンプルな画面を見てプレイヤーは右に行くのかな・・?と感じて進めてみます。
そして敵が出てきて初めて、「自分の仮説が当たっていた」と感じる。
そこにプレイヤーは初めて面白さを感じるんですね。
人はなぜゲームを遊ぶのか

こうした直感のデザインを根幹として、人に寄り添ったデザインをする。
これは、人はなぜゲームを遊ぶのか。ということの本質を捉えています。
それは、
ゲーム自体が面白いから遊ぶのではなく、プレイヤーが直感する体験そのものが面白いから遊ぶ。
ということなんですね。
いつだって理解したがっている人の脳。その脳がゲームを好むのは、ゲームが直感的な理解をもたらしてくれるからです。
体験デザインの基本構造はこの直感デザインの連続です。
しかしこの直感のデザインには欠点があります。
それは直感して試す。ということの繰り返しには、プレイヤーの不安という感情が隠れています。
直感デザインを何度も繰り返し、反復することで脳は疲れを感じてしまうんですね。
そして同じ刺激を与えられることで反応が徐々に弱まり、飽きてきてしまいます。
この疲れと飽きを払拭するのか、次に紹介する「驚きのデザイン」です。
驚きのデザイン

次に「驚きのデザイン」
驚きのデザインの効果は、予想が外れるというデザインを使って疲れや飽きを癒し、より長時間の体験をもたらすということです。
ゲームを飽きずに長く遊び続けられる重要な要素ですね。
これは、「ドラクエ」の中に出てくる様々な要素を例に解説されています。
ドラクエは、前提への思い込みを利用してプレイヤーの予想を外すデザインの宝庫なんです。
ドラクエにはなぜぱふぱふが出てくるのか

ドラクエには「ぱふぱふ」なるものが唐突に出てきます。
初めて見る人は、とてもタブーな匂いがしますね。
プレイしたことがある人は、ドラクエにはなぜぱふぱふが出てくるのか考えたことはあるでしょうか。
実はこのぱふぱふの本質は、予想が外れるという体験で疲れと飽きを癒すことにあります。
そしてこの効果を発揮されるためにはいくつか条件が必要で、とても計算されたタイミングで登場させているんですね。
本書ではあの任天堂元社長、岩田さんの言葉を引用しています。
ドラクエ5の結婚イベントに隠された本質

名作中の名作、ドラクエ5のサブタイトルは「天空の花嫁」です。
そう、このゲームには結婚イベントが出てくるんですね。
プレイ済みの方にはとっては印象的だったであろうこのイベント。
このイベントにも隠されたデザインがあります。
この結婚イベントでは、幼なじみのビアンカか、お金持ちの箱入り娘であるフローラか選ばなくてはなりません。
ビアンカは、幼なじみで勝気な性格でありながら、主人公のことをひっそりと慕う美女です。
フローラは、箱入り娘でおしとやかながらも真面目で実直な美しい女性。
この選択。
好みが出るこのデザインは、プレイヤーのプライベートを引きずりだす体験なんです。
プレイヤーの内面が明らかになってしまうコンテンツは強烈な驚きを生み出します。
人はなぜゲームを遊び続けられるのか

直感のデザインの中に、驚きのデザインを織り交ぜる。
面白さを感じながら、ときに驚きを感じて刺激を得てまたプレイしてしまう。
そうすることで人はゲームを飽きずに長く遊び続けられることができるんですね。
さて、この「ゲームを遊び続ける」についてですが、これにはこの問いが付き纏いますね。
「ゲームをし続けてなんになるのか」
このゲームをプレイすることの意義。
それを明確にしてくれるのが最後の「物語のデザイン」です。
物語のデザイン

最後に「物語のデザイン」を紹介します。
ゲームをプレイする意義に対しての答えの重要なキーワードは「物語」です。
このデザインは、「ラストオブアス」そして「風ノ旅ビト」を題材にして解説されています。
ラストオブアス、風ノ旅ビトどちらも物語が素晴らしいゲームです。
ラストオブアス、風ノ旅ビトの優れたストーリー性

ラストオブアスは終末を迎えつつある世界を旅する主人公と、主人公の亡くなった娘と同じ14歳の少女を描いた物語です。
とても濃厚な内容のストーリーをなんと登場人物の台詞と映像だけで描いている、映画のような作品です。
風ノ旅ビトは、唐突に目が覚めた主人公がおもむろに目に入った山の山頂を目指すという、不確かなものに向って進めて行く物語です。
この作品は文字どころか言葉自体出てきません。
謎の多いこの設定、ストーリーで驚くべきはこのゲームは数々のゲーム賞を獲得し、「物語が優れている」と評されているのです。
この作品たちから、そもそも物語とはなんなのかという点や物語が脳にどのような喜びを与えるかなどに触れています。
そこもとっても面白い内容となっていますが、この記事では厳選して二つのゲームの共通点とその先にあるゲームをする意義について触れておきたいと思います。
なぜ面倒な同行者がいるのか

2つのゲームの共通点として面倒な同行者がいます。
この同行者が物語の展開の鍵であり、とっても重要なんですね。
この同行者いずれもが、プレイヤーを苛立たせるように振舞うのです。
この同行者はなぜ苛立たせるような者として描かれなくてはいけなかったのか。
これも目的を持ってデザインされています。
それは、主人公とプレイヤーの共感を生むためです。
プレイヤーは、同行者によって進行が滞り、邪魔をされている感覚と一緒に主人公も自分と同じ気持ちに違いない。と信じるようになります。
これは、「ミラーニューロン」という脳の領域を利用しています。
簡単にいうと、目の前の人の感情を自分のことのように感じる神経細胞群です。
心が痛みますが、主人公を痛めつけるデザインをすることでプレイヤーの興味を惹かせ、主観的に感じさせることができるのです。
プレイヤー自身の成長

共感を経て物語の展開を主観的に感じることで、この面倒な同行者を通じて主人公との共感を通した成長につながっていきます。
それは、憎しみを克服すること
嫌いだった人物を好きなる体験を共感し、そしてプレイヤーは成長をするのです。
こうした感情や現実世界のプレイヤーにもたらすことで、ゲームを娯楽から成長させる手段へと意味を変えてくれるんですね。
そして2つのゲーム最後も共通しています。
それは
スタート地点へ戻る
プレイヤーが自分の成長に気づく大切なポイントです。
このスタート地点に戻ることは、ゲームをプレイする前後の自分を比べることでその成長に気づく。という重要な役割を果たしています。
この「物語のデザイン」ではプレイヤーの成長、そしてその成長に気づくという大切なデザインが含まれています。
ゲームの中の体験にその本質があり、体験を通してプレイヤーが変わること。それがゲームの意義です。
最後に

いかがだったでしょうか。
全ては紹介できませんでした。
本書では、それぞれのデザインに紐づけられて、もっと様々な効果や人の心の動きを作る方法が書かれています。
ゲームの中のキャラクターデザインだったり構成だったりを例にあげて、なぜこう作ったのか。なぜこうデザインしたのかにフォーカスしていき、ゲーム好きにはたまらない内容となっていました。
もはや当たり前なものが、どういった経緯でゲームに盛り込まれたのかを読んでいくと、数々の面白い発見がありました。
面白くてたまらない一冊です。
ものづくりに関わる身としてもとても勉強になりました。
気になった方はぜひ手にとってみてくださいね。
・ゲーム制作を学びたい人
・ものづくりに関わっている人
ではまた更新します。
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