今回は筒井康隆さんの『旅のラゴス』という小説を紹介します。
※ネタバレ含みます
一言でいうなら放浪する主人公の人生をしっとりと描くSFファンタジーといったところでしょうか。ジブリ好きの大人におすすめできる世界観となっています。実際にジブリ化の噂もあったそうです。
では紹介していきます。
目次
書籍情報
- 旅のラゴス(新潮文庫)
- 著者 筒井康隆
- 出版日 1994/03/01
- 文庫 232ページ
あらすじ
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
あらすじだけを読むと結構SF要素が強い印象ですが、実際に読んでみた感想としてはあくまでラゴスの旅がメインであり、その旅をしていく中に自然にSFが盛り込まれています。
読み進めるにつれ、ぬるっと不思議な世界観に入っていきます。
見所
旅をするラゴスの目的とは
この作品は最初から最後までラゴスが旅をしつづける話です。
何があろうとラゴスは目的の為に生涯をかけて旅を続けます。
そしてその目的というのは「学問の追求」です。
物語の舞台は現代より衰退した世界で先祖達が残した技術や知識を記す書物が残っています。その書物を求め、読むこと、またその知識を故郷へ持ち帰ることがラゴスの旅をする理由です。
この学問の追求はラゴスにとって生涯をかけでもやりたいことだったんですね
ラゴスのまっすぐな意志とぶれない姿勢がかっこよかったです。
波乱万丈の人生
生涯をかけてと書いたとおり、ラゴスは何十年もの歳月をかけて旅をします。
その道中でラゴスは奴隷になったり、結婚したり、なんと王様にまでなります。
そして様々な事件に巻き込まれながらも頭がいいので、機転を利かせてなんでもうまくやってのけるのです。
訪れる場所ごとに出会う人々も魅力的で、例えばラゴスの心から離れなかった村娘のデーデ、心が読めるが故に傷ついて自分自身も人を傷つけてしまうヨーマ、壁をすりぬける能力を持つウンバロ、ラゴスとの出会いで人生を大きく変えラゴスの目的に大きく貢献することになるタッシオなどなど…超能力に絡めながらざまざまな人物が登場します。
そして登場する様々な超能力は、ただ便利に使えるだけでなく色んな制約の元、メリットとデメリットを持ち合わせているのがよかったです。
ラゴスが王国を持ち、更に結婚までした時は若い妻をなんと2人も迎えます。2人の女性に同時に好かれ、周りの人々も博識で精神的にも余裕のあるラゴスを尊敬し、特別視します。
やりたいことをやって目標へ突き進む人はやっぱり輝いてみえるんですかね。始終モテモテだし最終的にうまいこといくラゴスさんでした。
ですがそれら全てはラゴスにとってはあくまで旅の途中の「通過点」のようでした。
物語を読み進めていく中で、色んな街、人に出会い、関係を築いていくのをみてここで落ち着くのか?旅は終わるのか?と何度も思いましたが、ラゴスは全くぶれずにただひたすら旅を続けます。
どれだけの地位を手に入れても、それらは立ち止まる理由にはなりません。
羨ましい生き方に学んだこと
現代まで歴史を重ね、これからも続いていく世界の中で、自分が生きている時はほんのすこしの時間に過ぎない
そのほんの少しの自分の人生を可能な限り自分の好きなことに費やすというラゴスの生き方
それをわかっているのも、清々しいほどふっきれているのも羨ましいなと感じました。
人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ。
生きている限り旅をする。
人生とは旅をすることであるというメッセージを感じました。
おわりに
以上、『旅のラゴス』の紹介と感想でした。
私がこの本を最初に手に取った理由は、「SF好きにはたまらない小説」とネットで紹介されているのをみたからです。
こうしたネットでの評判で読む人がどんどん増え、ロングセラーに繋がり、売り上げは加速しているそうです。
私も実際に読んでみて、魅了され、読了後は出会って良かった一冊だと感じました。
そして私もこの本を紹介したい一人になりました。
興味を持った方は是非読んでみてください。
90年